【完】☆真実の“愛”―君だけを―2


≪雪……≫


嗚呼、あの人の声も聞こえる。


皆、逢いに来たんだ。


当主のすべてを見届けるために、


愛しい人に、安らかな眠りを与えるために。


「もうすぐ、だから……」


「え?」


不思議そうなお祖父ちゃんに、私は微笑んだ。


「逢わせてあげるからね」


そう言えば、お祖父ちゃんは首をかしげた。


「誰と話しているんだ?」


お祖父ちゃんは、私の能力を知っている。


だから、大抵、私が一人で呟いているときは、見えない霊魂と話していると思ってくれる。


まぁ、その相手が、自分の最愛の妻と息子とは思わないだろうけど。


「……ねぇ、お祖父ちゃん」


「ん?」


昔は、取っつきにくい性格で。


お祖母ちゃんと出逢ってから、表情の増えたと言うお祖父ちゃんは、優しい顔で私を見た。


「おじいちゃんさ、お祖母ちゃんが亡くなった辺りで、不老以外の力を使った?」


彼が使っていないのなら、なんで、お祖母ちゃんが……お父さん、伯父さん、伯母さんが、この世に留まっているのかが説明できなくなる。


尋ねると、お祖父ちゃんは首をかしげて。


「いや、使ってないと思うが。なんでだ?」


「使ってないと思う?どういうこと?」


やけに他人口調な祖父は、気まずそうに目を反らし……呟いた。


「あの頃、とことん壊滅させていたから、記憶ねぇんだよ……何をしていたかも、曖昧だ。だから、たぶん、使ってないと思う」


(……使ったな、こりゃ)


焔棠家の男の特徴は、興味のないことは本当に視界に入らないというところである。

< 427 / 759 >

この作品をシェア

pagetop