【完】☆真実の“愛”―君だけを―2
薫は勿論のこと、寄ってきた女の人たちの扱いも空気同然。
全くもって、愛した女にしか興味を持たない焔棠家の人間たちは、また、愛する妻によって、変えられる。
自分の動作のことでさえも、面倒だと思っていたら、記憶から消してしまうのだ。
薫が、昔からそうだった。
「じゃあ、僕は院長室に戻るね。何かあったら、ナースコールで看護師を呼んで。僕にすぐ、連絡がいくから。……じゃあ、雪さん、“後片付け”をしてきますんで、桜ちゃんのこと、よろしく頼みます」
医者としての直樹さんは、格好良い。
少なくとも、事故に遭うまで、彼が白衣を着ているのをみたことがなかったんだが……
直樹さんが出ていった部屋に、続いて、入ってきた人物がいた。
しかも、肩で息をしながら。
「……はぁ、マジで、人使い荒すぎだろ。あいつ……」
不機嫌顔で現れたのは、御園相馬。
幼馴染みの一人だ。
「おー、相馬ー」
「雪さん、来てたんですか?早いですね……」
「当たり前だろ?可愛い孫が目覚めたんだから。瞬の野郎も、すぐ来るはずだが」
「えー?じゃあ、数日は賑やかだね」
みんなに会えるのが、嬉しかった。
皆、笑っていた。
「薫、今、こっちに向かっているらしいから……手続きを薫の代わりにすませに来たんだ。わりぃけど、俺、仕事があるんだよ。力のことについては、薫から聞いた。数日後、また、みんなで来るから」
「慌ててるね、あんた……」
「当たり前だ!今から、シンガポールだぞ!?」
「え、飛ぶの?」
「会議だよ!」
若干、やっぱり、キレ気味の相馬はそう言うと、慌ただしく、病室を出ていく。