【完】☆真実の“愛”―君だけを―2
沙耶の唇に何度目かもわからない、キスを落とす。
その唇は、驚くほどに冷たくて。
怖くなった。
でも、立ち止まるわけには……
「オギャー、オギャー……」
沙耶の手を力強く握ったとき、鳴き声が聞こえた。
聞こえた方に目を移すと、看護師さんに抱かれた赤子が。
「……3月31日、午後11時58分、誕生」
直樹さんは一言そう言い、
「続いて、4月1日、午後12時3分、誕生」
とも、言った。
「すぐに、乳児室へ」
「はい……っ!」
バタバタと、誰もが無我夢中だった。
俺は、呆然としていた。
彼女が命と引き換えにしてまで、生むと決めたのは、俺の子?
いったい、何がどうなっているのだろう。
どうして、彼女は消えたのか。
沙耶の性格を知っていれば、すぐに答えは出てしまう。
でも、沙耶の口から聞かないときがすまないから。
生かす。
どんな手を、使っても。