【完】☆真実の“愛”―君だけを―2
「……最期に借りを返そうと思ったんじゃが、人間関係の取り込み中か?」
一人の男が、現れた。
月姫の慕う養父であり、央耀が恨みながらも追いかけつづけた、月耀(りょう)……
「……この空気は、夕蘭じゃな……子でも生んだのか、フッ、どうなるかなんて、わかっていただろうに」
笑い、そう言った月耀にぶちギレたのは、蒼生だった。
「貴様、自分で巻いた種を知らないって言うのか?」
胸ぐらを掴み、怒りを露にする蒼生。
勿論、その光景には、誰もが驚いていた。
「……沙耶が妊娠したのは、人間の自然の定理の上であろう?我等、天都人には関係無いはずだが?」
優雅で、美しい、月耀。
「貴様……っ!」
「やめなさい!蒼生!!」
殴りかかろうとした、蒼生を止める声。
「……月耀を責めたって、何も変わらないわ」
背筋を凛と伸ばし、前を向く夏翠の傍らには、飛鷹がいて。
かわりないその光景に、俺らは動きを止めた。
「……月耀、どうせなら、月姫の前に現れてくれたら、良かったのに……」
「そんなことはできぬ。二度と会わぬと決めた我が子じゃ。あの子が人として、そなたに生まれ変わった今、儂はただの月の守り人になってしもうた」