【完】☆真実の“愛”―君だけを―2
「沙耶、おはよう」
最近の日課。
まず、起きたら、沙耶に挨拶をする。
返事が返ってくることはないけれど、それだけで、俺はまだ、大丈夫だと思える。
沙耶を失う恐怖。
それに呑まれた暁には、俺は我を失うだろう。
そうならないためにも、俺は沙耶の側を離れない。
「早く、目覚めろよ……」
沙耶の左手の薬指。
そこに、勝手だが、指輪をつけて。
「お前が目覚めたら、ちゃんと、言うから」
どうか、今だけは。
この穏やかな流れに、身を任せていたい。