【完】☆真実の“愛”―君だけを―2





「あれ?……兄さん、おかえり!」


風呂から上がり、廊下を歩いていると、水樹が駆け寄ってきて。


「わりぃな、受験生」


「勉強しなくても、大学は受かりますぅー」


頭を撫でてやると、彼は唇をつきだした。


沙耶がやったら可愛いが、弟がやったら、薄気味悪くて鳥肌がたってしまう。


「勉強しなくてもって……お前な、全国の受験生に謝れよ」


水樹が受ける大学は、姫宮の運営する蒼繚華。


かつて、俺達が雪さんの命令を受けるまでいた学校の大学で、勿論、レベルは高い。


全国の秀才の中の秀才が集まると言っても過言ではないくらいの学校だから、油断はできないはずなのだが……わが弟は、今日もマイペースに焦りというものがない。


「そんなの、兄さんには言われたくないね。兄さんだって、受験生のときにさ、沙耶とデートには行くわ、仕事はバリバリするわ、寝る時間すらない状態で海外を飛び回るわ……勉強してないじゃん」


「…………」


そこを突かれては、なにも言えない俺。


だって、していないから。

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