【完】☆真実の“愛”―君だけを―2


「……ほんに、人間は不思議じゃ……」


フワッ……


花の香りがする。


これは、何のにおい?


空を見上げれば、美しい月が上っている。


今日は、満月か。


「よく笑い、よく泣き、よく憎み、そして、愛する」



神々は、私たち人間を守るためにあるんじゃない。


だから、願掛けは無駄なのだと、昔から知っていた。


「……だからこそ……」


彼の手に扇子が現れ、彼はそれで空気中を扇いだ。


花が、舞い上がる。


私の頬を撫で、香っている。


「面白いんじゃがの……」


目の前の光景に、ただ、見とれた。


人間にはあり得ないほどの美しさ……思わず、傅いてしまいそう。


花は香り、蝶となり、空へ、空へと舞い上がる。


「…………?」


そして、それを眺めながら、私は手を喉にやった。


違和感。


これは。


「……そなたは、生きるよ」


私に、彼が、微笑む。


「守護聖の加護を全て、一身に引き受けて……そなたは、生きる」


私は……生きる……


「まだ、ほんの少しの命が残っているからの」


「……?」


「相馬がおおかた、貯めたんだろうよ。いつか、沙耶の力となるように……」


「封力石の、新たなる別の使い方だよな」


笑いながら、彼によってくる人。


「……」


「……俺を、覚えているか?沙耶」


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