【完】☆真実の“愛”―君だけを―2
「……月耀、みんな、幸せか?」
朱鷺は、なにも知らないらしい。
生まれ変わった、あとのことは。
「ああ、みんな、笑っているよ」
月耀が頷けば、朱鷺は、どこか寂しげに……けど、すぐにいつも通りに、元気に笑って。
「じゃあ、送り出さねぇと!」
記憶の彼方にある、夕蘭の記憶で見た、朱鷺の笑顔は暖かく、眩しくて。
そんなことを思い出した私は、心が暖まったのを感じた。
「沙耶、こっちを向いて」
私は、月耀を振り返った。
すると。
「数多の命が巡る世に生きる、汝ら、人の子に数多の幸福が在らんことを」
月耀はそう言いながら、私の額にキスをおとした。
「行ってらっしゃい」
多くの人間が死んだ。
そんな事件は、終わりを告げたはずのに。
今なおも、世界の端で、悪は渦巻く。
(……ずっと、ずっと、なくならない)
愛も、憎悪も、それらは皮膚一枚の世界だから。
隣り合わせの、世界だから。
光があって、闇があるように。
私は、孤独と背中合わせに、愛を知った。
「……!」
私の歩む道を、光が照らす。
私は、私を笑顔で見送ってくれる守護聖たちに、心からの感謝を含め、笑顔を見せた。