【完】☆真実の“愛”―君だけを―2


そして、事は起こる。


期待を裏切らないように。


午後十時半くらいのこと。


私は、沙耶の病室を訪ねた。


予知通りに、直樹さんにも知らせて。


車イスで、そっと、扉に手をかけると。


「……そう、ま……?」


ポツリ、と、沙耶と思われる子の声が聞こえた。


瞬間。


「ッ、……」


緊張の糸が、切れた気がした。


心が洗い流されるような、そんな、初めて聞く音。


自然と、頬に涙が流れた。


「桜ちゃん」


看護師の朝倉さんとかけてくる直樹さんを見て、私は口許に人差し指をたてた。


そして、相馬の声が聞こえたのか、二人は目を見開いて。



「これは……」


「……奇跡、ですね」


「ふふっ、各室、防音効果があって、よかったね?」



三人で、暫く、静かに聞いていた。


初めて聞く音を。

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