【完】☆真実の“愛”―君だけを―2
■相馬side□




「……無理でしょう?」


生きていて、良かった。


沙耶は、俺を置いて逝かなかった。


戻ってきてくれた。


それが、嬉しくて。


その一方で、沙耶が苦しんだ原因の自分が許せなくて。


これ以上、沙耶を傷つけたくなかった。


愛しているから……


「……相馬が今、何を考えているのかね、私、少しなら、わかるよ。でもさ、気にしないでほしいの」


沙耶は、俺を見つめる。


どうして、俺にそんな目を向けられる?


俺は、お前を殺しかけたのに。


「私は、ずっと、傷つくのが、怖かった。朝陽を失ってから、何度も諦めることで、傷つかないように生きてきた。傷つきたくない。……そう、思って」


知っている。


でも、それは、逃げではなかった。


沙耶は、俺とは違う。


「だけどね、本当は私、我が儘なんだ。でも、これで、最後にするから……」


そんなことを考えていると、ネクタイを引っ張られた。


そして、そっと、触れた沙耶の唇。


冷たくて震えている、その唇。


一瞬のような時間。


一瞬のような触れあい。


それだけで、俺は泣きそうになった。


離れたあと、沙耶は笑う。


「契約はこれで終了!もう、自由になってもいいよ」


笑顔で、俺を引き離す。


< 609 / 759 >

この作品をシェア

pagetop