【完】☆真実の“愛”―君だけを―2


「……で?」


「で?……って言われてもねぇ?」


倒れたことが嘘みたいに、ケロリとしている沙耶は、笑ってばっかり。

「薫、あんま、眉間にシワばっか寄せてると、桜が目覚める前にお祖父ちゃんになっちゃうよ?」


この、物怖じのなさ。

尊敬に値する。

仮にも、相手は、極道の関東一の人間なのに……。


「……沙耶、誤魔化さないで。退院したあと、どこ行っていたの?」


すると、とうとう、痺れを切らした柚香が、沙耶に訊ねた。


沙耶は、目をパチクリとして。


「別に誤魔化しているつもりはないけど……言ったら、心配するじゃん?」


「そりゃ、するよ。沙耶のこと、大事だもん」


沙耶の存在は、大切だということを教えるために、柚香はこんな感じで、沙耶に笑いかけることがある。


その笑みは、穏やかで優しい。

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