【完】☆真実の“愛”―君だけを―2


「いない」


そう言うと、沙耶はキョトンとした。


「え?でも、夏に……」


「あれは……」


沙耶を、愛している。


そんな言葉を、俺が口にしてもいいのか。


分からなかった。


沙耶を苦しめることになりやしないか。


沙耶を愛すということは、沙耶を御園という家に引きずり込むことだ。


それは、沙耶を傷つけないか。


「嘘、つかなくていいよ。私は、大丈夫だから……」


嘘をつけ。


俺を愛していると、言ってくれたじゃないか。


「手紙……」


「手紙?…………あっ!」


書いた内容を思い出したのか、沙耶の顔は赤く染まる。


「忘れてたぁ……」


ゾクリ、肌が粟立った。


久しぶりに見た、沙耶の“女”の顔に。


「なんで、覚えてるのさ……」


恥ずかしそうに、頬を手で包む沙耶。


なんで、愛したのか?


そんなことを聞かれても困る。


気がつけば、愛していたのだから。


「……あー、っ、ま、まぁ!気にしないで!死ぬと思ったから、言い残したことを言っただけだから!本当に、相馬が気にすることでは……」


愛してる。


愛さない方が、無理だ。


なんで、そんなに強くいられる?


どうして、笑えるんだ。


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