【完】☆真実の“愛”―君だけを―2


「……相馬、手、貸して」


ふと、沙耶がそんなことを言ったから。


「ん?」


右手を差し出せば、


「愛してる」


真っ直ぐに、そう言われた。


「っ……」


思わず、息を呑むと。


沙耶は、俺の右手に頬擦りして、眠ってしまった。


そんなこと。


言われる前から、俺の方が……


「……俺も、愛してるよ」


生きていた中で、心の中の俺の扉を叩き、開いた唯一の女。


何故、立ち止まっていたのか。


何故、この想いを拒み続けたのか。


もっと、早くに気づいていれば。


沙耶をむやみに傷つけることもなかったのに。


芽生え、狂い咲く、この深く重い愛の“音″をこいつは背負いきれるのか。


もしかしたら、今以上に沙耶を縛り、苦しめるかもしれない。


もっと、もっと、傷つけることになるかもしれない。


それでも。


自分はこの女が、沙耶が、欲しいんだ。


例え、拒絶されたって。


俺のなかにいる、“あいつ”に怯えられたって。


一度、手にいれてしまえば、二度と手放せない。


わかっているから、伝えられない。


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