【完】☆真実の“愛”―君だけを―2


幼い頃。
両親は言わずもがな、兄たちも可愛がって、愛してくれていた頃。


私は誰よりも、朝陽が好きだった。

分からないことや面白いことを教えてくれる朝陽が好きで、好きで、大好きで。


朝陽にとてもなついていた。


明るく、笑う人。


けれど、ある日突然、彼はいなくなった。


……愛する妻も、子も置いて。


“失う″ことを知らなかった私は、自然に心に穴を開けた。……寂しさから。


死というものを理解できなかった幼い頃。


アイラの不明で知った、死。


怖くなった。

私は、生まれてきたときに両親を悲しませたのに、また、両親の大切なものを奪ってしまったと。


その時から、心を封じた。

すると、甘え方も頼り方もわからなくなった。

朝陽が与えてくれたものたちが、何も残らない私を支えてくれた。

たまに、ふと、私を心配そうに見る兄や両親に笑いかけ、元気に振る舞った。


今さら、甘え方などわからなかった。

また、失うのはごめんだと、思ってた。

また、あんなに心を寄せていた人にいなくなられたら、と思うと、ゾッとする。


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