【完】☆真実の“愛”―君だけを―2
わかっている。
彼は、不安なんだ。
常に不安を押し殺し、私の不安さえも引き受けてくれていた彼が感じている、大きな不安。
だから、私が寝ている間に寝ない。
仕事を片付けながら、私の様子を見ている。
私が、死なないように。
そんなことしなくても、恨んでないのに。
寝てほしいのに。
体は、大事にしてほしいのに。
今の私には、それを言う権利はないから。
なにも、言えない。
でも、私が持っている想いなら、言える。
「……相馬、手、貸して」
首をかしげる、
「ん?」
相馬の右手を握りしめて。
「愛してる」
真っ直ぐに、そう言った。
「っ……」
息を呑んだ相馬に私が言えるのは、それくらいだけど。
それでも、彼は無意味な存在じゃないと言いたかった。
それだけ、彼の瞳は戻っていた。
すべてを諦めた、初めて逢ったときの彼に。
(……諦めないで)
私は相馬の右手に頬擦りをして、意識を手放した。