【完】☆真実の“愛”―君だけを―2


「……行こっか」


「待て」


俺の手をほどいて、離れようとした沙耶を再び、腕の中に閉じ込める。


「行くな」


「……いや、双子のところ……」


「頼むから、待ってくれ」


「……」


心を癒すものすら、それも愛だと、誰かが言った。


信じ続けることが出来なかった俺の前に、ある日、突然現れた沙耶は、俺に真実の愛を教えた。


心を奪うのも、傷つけるのも、愛だと。


なら、俺が母さんの死したときに感じた、あの絶望も、諦めも、愛だったというのだろうか。



「……相馬?」


「…………」


俺は、沙耶を縛っても良いだろうか。


俺の血は、意思は、沙耶を縛るだけで終わるだろうか。


それは、沙耶を傷つけないだろうか。


すべては、不安となって、俺を襲う。


苦しみから抜け出せず、俺はもがく。


見つけられないと思っていた唯一は、俺の前に現れて、今、俺の腕の中にいる。


でも、不安でたまらない。


自分が狂っていることくらい、分かっている。


それが、愛しい女を傷つけるものになるのなら。


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