【完】☆真実の“愛”―君だけを―2


「別に……拉致られただけだもん」


(……ん?)


「どういう意味?」


俺が疑問に思ったように、柚香が問い直す。


「だから、退院するときにね?迎えがいるじゃん?一人で帰れるって言ったんだけど……流石に反対されたから、大人しく、迎えに来てもらおうと思った次第ですよ」


「……色々といいたいけど、いつも通りだから、とりあえずいいや。うん。……で?」


(流すには、苦しくないか……?)


柚香も、意外に細かいことは気にしない。


「でも、ほら。私の家って、あれじゃん?だからさ、迎えにこれる人間が誰もいなくてー」


「うん」


「相変わらず、両親は海外のどっかだし、大兄たちは、仕事だし」


娘が入院しているときに仕事して、迎えにもこれませんって、意外にひどいと思うが、それを沙耶が望んでいるらしいから、変な話だ。


「だからさ、相馬に頼んで迎えに来てもらうことになったのよ」


黙って聞いていれば、中々の問題発言。


御園のトップを顎で使う権力……そんなことを相馬にする奴は、俺たちは相馬の姉の京子さん以外知らない。


「で、騒ぎになるからって、裏門のところで姫宮先生と待っていたの。暇でさ、姫宮先生と話して、笑いあってたら、御園の車が来て……乗ってってお願いされてね?それが、京子さん。とりあえず、乗ったんだけど」


「乗ったんかい!……つか、京子さんって、相馬の姉の?」


「そうそう!」


やはり、沙耶は感覚がずれていると思う。

そこで、何の違和感も抱かず、乗るって……。

お嬢様では、あり得ない。


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