【完】☆真実の“愛”―君だけを―2


「……大ちゃんが囚われているのは、沙耶のせいなんかじゃないよ。朝陽さんが死んだことだって……違うって、愛しているって、大ちゃんたちに教えるように、朝陽さんに頼まれていたんでしょう?朝陽さんが沙耶のことを恨んでいるのなら、そんなことはありえない。それに、大ちゃんだって泣いて、沙耶に感謝していたじゃない。大ちゃんは、置いてきぼりにされたとか思ってなかったし」


「……本当?」


優しい二人のことだから、また、嘘をついているのではないだろうか。


「嘘はついてないからね。ただ、ちょっと大ちゃんにとって、混乱することが起こってしまっただけ。私は、そんな大ちゃんを抱きしめただけだよ。後悔なんてしてない。何より、私が、流されてそんなことをする女に見える?」


私は、首を横に振った。


「見えない……」


言っていいものか、春ちゃんは小さい頃から大兄ちゃんと習っていた合気道の有段者である。


大兄ちゃんも有段者だし、男の人だから、女の人である春ちゃんが抑え込まれるのは容易いが、普段、自分の世話をしてくれている春ちゃんにそんなご無体を働くほどの強さは、大兄ちゃんにはない。


「でしょう?沙耶が不安な顔をしていたら、茅耶と悠哉が不安がるわよ」


それをわかっていたから、彼女は受け入れた。


大兄ちゃんのことを、心から信じているから。


そんな関係に、ずっと、私は憧れて……諦め続けて……相馬に出逢えたんだった。


春ちゃんの強さと、大兄ちゃんの強さ。


それぞれ違う、その強さがずっと、私は欲しかったんだ。


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