【完】☆真実の“愛”―君だけを―2
「なんで……」
「『やりたいことがある』って。だから、行ったのを大人しく見送った。でも、今まで、卑怯な手を繰り返してきた沙耶のおじいさんがそんな手を使うなんて、大ちゃんを大人しく受け入れるなんて、裏があるに違いないわ。だから、調べてほしいの。私、超がつくほどの一般人だからさ」
やりたいこと?
敵討ち?
穏やかな大兄ちゃんに限って、そんなことがあるだろうか。
喧嘩が大好きで、医者の癖に滅茶苦茶に相手をボコる勇兄ちゃんなら話はまだ、わかるのだが。
「……帰る」
「沙耶」
春ちゃんの嗜める声が聞こえ、私は怒りを露にした。
「……無理。今度こそは、許せない。血かもしれないけれど、あの人が次に取る行動が分かるの。大兄ちゃんをも、駒に使う気よ。さすれば、大兄ちゃんは自身の傀儡となり、自分が死ぬまでは自分の地位を守ることが……ううん、この言い方はダメね。多喜子さんを守ることができるから」
私が失踪したときに調べていてくれた藤島グループの“裏事情”を知ったとき、憎しみの連鎖は止まることを知らないのだと知った。
与えられたことをそのまましてしまうほどに、おじいちゃんは壊されたんだ。
偽物の愛を語る、毒婦に。