【完】☆真実の“愛”―君だけを―2
「御苦労だったな、甲斐」
さっきまで、微笑んでいたはずの相馬は別人だった。
「いえ。アイラ様の件などもすべて、片しておきました。何件か、目を通してもらいたい案件がございますがどうなさいますか」
さっきと変わらず、スーツを身に付けているのに。
普段と全然違う。
「……会社に行く。用意しておくように。それと、アンドレイ財閥の件はどうなった」
祖父の机の上に転がっていたボールペンを、祖父にアイコンタクトで借り、相馬はさらさらと何かをそばの紙に書き付けた。
「ロシアのアンドレイ財閥ですか……なんとか、商談は成立しそうです。長い付き合いになるでしょうね」
「なら、挨拶をしとかないとな。今回、俺はあちらにいけなかったから……きちんと、話はつけてきたか?」
「……おっしゃられた通りに」
これが、彼の仕事モードらしい。
さっきから無口だったのは、仕事のことを考えていたからか。
「そうか。なら、これを頼む。――沙耶、電話しても構わないか?」
「えっ…………あ、はぁ……どうぞ……」
相馬は私に許可をとると、“統治者”の顔のまま、スマホを取りだし、電話を始めた。
それに気づいた祖父や、大兄ちゃんたちが口をつぐむ。
「――Мне жаль, что мое приветствие было отложено. Это Мизоно Соун. Большое спасибо за это время……Ха-ха, я также хотел встретиться с Андреем впервые за долгое время, но здесь моя работа здесь……да. В следующий раз, я навещаю вас……」