【完】☆真実の“愛”―君だけを―2
(あ、これ、面倒なやつだ……)
遠い、記憶の中を辿り、思わず、ため息。
五個くらいの式を作り、計算した上で、公式に当てはめ、また、出た答えを公式に当てはめ、グラフを書いて、ようやく答えが出るやつ。
(本気で要らないよね!?将来!!)
内心、そんなことを思いながらも解き、席に戻る。
見れば、唖然としている先生。
「黒橋さん、この方法はまだ、教えてませんが」
「あれ!?数ページ、教科書を間違えた?」
柚香を振り返る。
「ん……それは、五ページあとだね」
「マジで?……ごめんなさい、先生。書き直します」
どうやら、使った公式はまだ、教えられていなかったらしい。
「良いです。これも、中々……よく、予習をしていますね」
苦笑いの先生。
何て言うか……すんごく、申し訳ない。
「正解です。このやり方は後程に……」
(……なんか、気を使わせてしまい、本当にごめんなさい!)
先生は、親が権力者の自分達に強く意見ができない。
だからこそ、なるべく、迷惑はかけたくないのだが……
(お嬢様って、なんなんだろう……)
面倒くさがりやな父と、世間知らずの母。
適当な兄に、鈍感な兄。
可愛い腹黒の側近たちと、
自由人の父の幼馴染に囲まれて育ってきた私。
(まって、本気で、お嬢様って何?)
端から見れば、超絶下らない内容。
その事を私はこの授業中、ずっと考えていた。
そして、大変なことに気づく。
(あ、今日、夏翠いないじゃん!)
お嬢様の鏡である、姫宮夏翠さんの不在に気づいて、また、悩みの迷路へ……なお、私の机の上には、とりあえず、広げられたノート(今日の授業の板書は白紙)と使っていない、黒ペンが転がっていた。