【完】☆真実の“愛”―君だけを―2
「さ、沙耶……?」
普段の沙耶で見慣れてしまっている、澪もこわかったのか、千歳の影に隠れた。
(妖怪まで、ビビらせるって……)
相変わらず、私の幼馴染みは最強である。
「まるで、虎だな」
千歳が感心したように呟き、同じようにビビる真姫の頭を、蒼生が撫でる。
「……敵に回したくねぇ」
そして、ボソリと呟いた。
暫くすると、クラスメイトの何人かが派手な女狐グループの異変に気づき、静かになっていく。
「……あれ?なんで、みんな、こんなに静かなの?」
健斗さん譲りの漆黒の瞳を細め、沙耶は妖艶に微笑みながら、先生との話を終え、教室の私たちのところへ戻ってくる。
自分がうみ出した雰囲気に、首を捻りながら。
「澪、真姫?顔、真っ青だよ?」
「……っ、沙耶、だよね?」
「そうだけど?どうしたの……」
確認するような声音。
それで気がついたのか、沙耶は私を振り返る。
「もしかして……出てた?」
お茶目に聞いてくる、沙耶。
「うん、思いっきりね」
クラスメイトの視線が沙耶に集中し、沙耶はやっちまったと、頭を掻く。
「ちょーっと、イラっとしただけだよ?」
「だけじゃないでしょ……ゲッ、先生来た!」
さっき、いなくなった学年主任。
「ありゃー、戻ってくんの早すぎでしょ」
沙耶が心配だったのか、見に来た学年主任は、今度こそ自分の教科を持って、現れた。