【完】☆真実の“愛”―君だけを―2
「席つけー!」
大きな声で先生がそういうと、バラバラとみんなが着席する。
そして、先生は何の前触れもなく、話し出す。
「お前ら、次のあれの選手は決めたのか?」
「あれ?」
「なんですか、あれって」
生徒の複数が首をかしげる。
「担任から聞いてないのか?」
そう言われて、思い出す。
「クラスマッチ!」
「おお、そうだ、そうだ。流石、月島」
「……先生が柚香を使いまくるからでしょ」
「なんか言ったかー?黒橋」
「なんも」
私が声をあげ、それを誉めた先生を見て、沙耶が呟き、確認するように不気味なほどの笑顔を浮かべた先生に、沙耶は微笑む。
さっきの名残か、それだけで、室温が下がる。
「バスケに出るやつは、俺に言えよ。特別に特訓してやる」
そこに、先生の元気な声が響いて、生徒が我に返る。
(……沙耶の笑顔、影響を及ぼしすぎ……)
耐性のある人間は、まだいい。
ない彼らが、かわいそうである。
「えぇー、いらないですよー」
「私ら、出ないもんね」
折角、先生がそう言ってくれたのに、生徒たちはそうやって、逃げようとする。
「根性なしどもが」
嫌だという生徒を見回し、先生がそういった瞬間。
私たちはごく自然に、打ち合わせをしたわけでもなく、沙耶を見た。
沙耶は先生を見上げ―…
「じゃあ、特訓してもらおうかな!」
ラッキーと、笑う。
今度のは、冷笑ではない。
楽しそうな笑顔である。
唖然とする、クラスメイト。
横見れば、千歳は呆れて頭を抱えていた。