【完】☆真実の“愛”―君だけを―2
「……沙耶?」
心配そうな、甲斐の声。
なんで、泣きそうになっているのか。
そんなことは、分からない。
けど。
「……なんでもない」
すごく懐かしく、感じてしまう。
幼い頃、この街に住んでいたからだろうか。
アイラや朝陽と過ごした思い出があるからだろうか。
何故か、とても懐かしい。
「ここの最上階に相馬がいるんだけど……どうやら、忙しそうなんだよね。どうする?沙耶」
「甲斐も相馬の補佐に回らなくちゃでしょう?まさか、本気で京都までつれてこられるとは思ってなかったから、なんも大したものは持ってきてないけど……京都の町をブラブラしてるよ。相馬も用事があって、私を呼びつけたんだろうし」
「用事って、なんだろ。あいつが人に執着することはないのに」
「さあ?単純に、暇……ではないな。この人の多さを見れば」
滅茶苦茶高い、ビル。
ここの一番上の部屋に相馬がいるというのだから、中々である。
これが、御園の力。
「休んでいる暇があるなら、働かせたいな」
甲斐がニッコリと笑顔で、そう言う。
『あいつは鬼畜だぞ』
瞬間、相馬が言っていた言葉を思いだし、苦笑する。
「……怖いよ、甲斐。休ませてあげな」
なんか、甲斐が側仕えだと大変そうなのは、甲斐のこの鬼畜の部分から来るのであろう。