偽装新婚~イジワル御曹司の偏愛からは逃げられない~
光一さんがこのところ梨花さんとよく会っていた理由について、詳しく説明してくれた。
「梨花は旦那と離婚協議中なんだ。けど親権で揉めてて、話し合いは平行線。それで、俺の学生時代の友人で弁護士をしてる奴を紹介してやったんだけど……」

(そういえば光一さん、法学部出身だったっけ)

「旦那の母親がさ、リョウを無理やり連れ去ろうとしたのよ!!うちの跡取りだとかなんとか言い張ってさ。ちょっと金持ちだからって、偉そうにさぁ〜。誘拐よ、犯罪じゃないの!」

梨花さんはものすごい剣幕で、お姑さんとのあれこれを私に話してくれた。
私は梨花さんのパワフルさに、黙ってうなずくばかりだ。

要するに、嫁姑関係がこじれすぎて離婚危機にまで発展してしまったということらしい。

「もういいの。絶対、離婚するから。あんな姑、耐えられないもん」
素面なのに酔っぱらいのようにくだをまく梨花さんを横目に、光一さんが私の耳元に顔を寄せた。

「そもそもさ、家庭に問題があるって向こうの親に結婚反対されてたみたいなんだ。つまりはうちの親父が元凶なわけで……」 

光一さんとしては、少し責任を感じてしまっているらしい。それで、できる限りフォローしようと色々動いていたとのことだった。

「見ての通り、修羅場の真っ只中で、梨花も情緒不安定だからさ、華にはもう少し落ち着いてからきちんと紹介しようと思ってたんだけど……それが裏目に出た。悪かったな」
「えっと……びっくりしたけど、私もなんか勝手に早とちりしちゃってたし」

勝手に妄想をふくらませて、思い悩んでいないので、光一さんに聞いてみるべきだったのだ。そしたら、彼もきちんと話をしてくれたはずだ。
都合の悪いことを先延ばしにしてしまうのは、私の悪い癖だ。それが最悪の結果を招くことはわかっていたはずなのに。

私は梨花さんのほうを向き、その美しい瞳をじっと見つめた。
「あの、私はなにもできないですけど、旦那様とリョウ君と、また仲良く暮らせる日がくるように祈ってます!」
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