偽装新婚~イジワル御曹司の偏愛からは逃げられない~
「愛がなくても、結婚生活ってやってけるの?」
「知らないわよ。うちはちゃんと愛があるもの。ーーあのね、初めに言った通り、私は自業自得だと思ってるわよ。あんたは相手の表面しか見てなかった、そのくせ愛されて、幸せな結婚生活を送りたいなんて‥‥そんな都合のいい話あるわけないでしょ」
いつも以上に厳しい悠里の言葉が耳に痛い。痛いのは‥‥その通りだと私も薄々気がついているからだ。
光一さんは極上のイケメン。いつも穏やかな優しい笑顔で、私に接してくれた。私はかっこいいって騒ぐばかりで、彼の表情からそれ以上を読み取ろうとはしていなかった。疲れ気味とか、ちょっと不機嫌とか、些細な変化はきっとあったはずなのに‥‥。
思い返せば、デートで見る映画も食事するお店も、私の好みそうなものばかり選んでくれていた。私は光一さんの好みを知ろうともしなかった。
「たしかにね。光一さんの言う通りだわ。軽薄な馬鹿女と二重人格の冷たい男で、お互いさまってやつなのかも」
少なくとも、騙された〜私は被害者だって、一方的に彼を責める権利は私にはないだろう。

「そもそもさ、華は昔からレベルの高い、無理めな男を好きになるよね。単にミーハーなだけ?」
さすが親友、鋭い。そうなんだ、私は昔から身の丈に合わないハイレベルな男に惚れやすい。中学時代は学年で一番頭のいい高田君に恋してたし、高校時代はサッカー部のキャプテンの澤口先輩が好きだった。ふたりとも学校で一、二を争うモテ男だったから、当然叶わぬ恋だったけれど‥‥。私のこの習性には一応理由があるのだ。
「母親の洗脳教育の賜物なのよ」
「なにそれ?」
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