偽装新婚~イジワル御曹司の偏愛からは逃げられない~
もっとも腹立たしいのは、彼女がそれを不満とも思っていないように見えることだった。

「え、温泉旅行のお土産?わー、これ高級なやつですよね?いいんですか?」
「いいのよ~。こないだ捻挫しちゃったとき、シップ買ってきてくれたじゃない。あれ、ほんとうに助かったから。うちの嫁も白川ちゃんみたいに気が利く子だといいのにー」
「でも、私じゃ、あんな美少年のお孫さんは生まれてこないかもですよー!来月は運動会って言ってましたよね?また写真見せてくださいね」

彼女はおばちゃん特有のオチの見えない長話にも、嫌な顔ひとつ見せず付き合っている。

(便利に使われてるだけなのに、よっぽどのお人好しか、ただの馬鹿か)

俺にとって人間関係とは、利を得ようとすりよってくる人間をうまくかわすこと。この一点に尽きる。幼少期からずっとそうだった。
無駄な敵は作らず、かつ、利用もされないように立ち回る。
すっかりコツをつかんだとはいえ、それなりに疲弊することも事実だった。
そんな自分からすると、彼女のように無自覚に利用されまくっている人間は馬鹿だとしか思えなかった。






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