偽装新婚~イジワル御曹司の偏愛からは逃げられない~
社内懇親会という名の合コンに誘われ、俺が珍しくOKをしたのには理由があった。
その前日、上司からそれとなくお見合いの話を持ちかけられたからだ。相手は取引先の社長令嬢。一度でも会ってしまったら、こちらからは絶対に断れないであろう相手だった。

(そんな背景の女と結婚して、家に帰ってからも気を遣うなんて、ありえねー)
上司の前では笑顔を崩さなかったものの、本音はそんなところだった。

それならば、もっと気楽な相手とさっさと結婚してしまうのも悪くない。相手が社内の女なら、くだんの上司も納得してくれるだろう。合コンの誘いを受けたとき、そんな打算が頭をよぎった。

会場となるレストランに少し遅れて到着した俺は、白川華の姿を見つけて少し驚いた。

(そういや、受付の子たちと……って言ってたっけ)

作り笑顔を浮かべながら、相手の女たちをざっと眺める。
シミひとつない白い肌、バサバサと音のしそうな長い睫毛、テカテカした赤い唇。つやのあるロングヘアに、仕事帰りとは思えないほど気合いの入ったワンピース。
制服なのかとつっこみたくなるほど、同じ雰囲気のファッションとヘアメイクだ。
みな、美人なのだろう。その証拠に周囲の席の男どもが、羨ましそうにこちらを見ている。

だが、俺にはその魅力がいまいちわからなかった。そもそも、全員が同じ顔
に見えて仕方ない。

(クローンみたいで、面白くはあるけどな)

嫁探しにきたつもりだったけれど、顔の区別もつかないんじゃ難しいかもしれない。





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