偽装新婚~イジワル御曹司の偏愛からは逃げられない~
俺の登場に色めきたっている彼女たちから視線をそらすと、一番端に座る華と目があった。
紺色のカーディガンにベージュのタイトスカート。他のメンバーと比べると、だいぶ地味だ。
華は口角をあげて、口元だけで俺にほほえみかけた。
メイクも直す時間がなかったのか、その唇にはほとんど色がのっていない。
(どうせまた仕事を押し付けられたんだろうな。あの子らが化粧する時間を確保をするために)
ばっちりメイクの彼女たちから、きつめの香水の匂いがただよってきて、思わず顔をしかめる。
(臭くないだけ、こっちのがマシだな)
俺は彼女に声をかけ、その隣に座った。
適当な世間話をしているだけだったが、華は嬉しそうだった。少なからず、彼女が自分に好意を持っていることは伝わった。
宴会も終わりにさしかかったころ、俺が男子トイレから出ようとすると、ちょうど前でクローン女がふたり、並んでおしゃべりをしていた。
女子トイレは混雑しているようだから、順番待ちをしているのだろう。
ふたりは俺の存在には気がついていない。
「せっかく鈴ノ木さん来てくれたのに、なんで華さんとしか喋らないわけ?」
「ね~。まさか華さん狙いなのかな?」
(別に狙ってないけど……)
なんとなく出づらくなってしまい、俺は扉を開けず、その場にとどまった。
「え~?女なんて選び放題な鈴ノ木さんが華さんにいくかな?」
「そうだよねぇ。秘書課の須藤さんですら、振られたって噂なのに」
俺は小さくため息をつく。慣れたこととはいえ、女同士のこういうやり取りを聞くのは気が重くなるばかりだった。
(仲よさそうにしてても、結局いないとこでは陰口か)
ちなみに須藤なんて女もまったく知らない。
紺色のカーディガンにベージュのタイトスカート。他のメンバーと比べると、だいぶ地味だ。
華は口角をあげて、口元だけで俺にほほえみかけた。
メイクも直す時間がなかったのか、その唇にはほとんど色がのっていない。
(どうせまた仕事を押し付けられたんだろうな。あの子らが化粧する時間を確保をするために)
ばっちりメイクの彼女たちから、きつめの香水の匂いがただよってきて、思わず顔をしかめる。
(臭くないだけ、こっちのがマシだな)
俺は彼女に声をかけ、その隣に座った。
適当な世間話をしているだけだったが、華は嬉しそうだった。少なからず、彼女が自分に好意を持っていることは伝わった。
宴会も終わりにさしかかったころ、俺が男子トイレから出ようとすると、ちょうど前でクローン女がふたり、並んでおしゃべりをしていた。
女子トイレは混雑しているようだから、順番待ちをしているのだろう。
ふたりは俺の存在には気がついていない。
「せっかく鈴ノ木さん来てくれたのに、なんで華さんとしか喋らないわけ?」
「ね~。まさか華さん狙いなのかな?」
(別に狙ってないけど……)
なんとなく出づらくなってしまい、俺は扉を開けず、その場にとどまった。
「え~?女なんて選び放題な鈴ノ木さんが華さんにいくかな?」
「そうだよねぇ。秘書課の須藤さんですら、振られたって噂なのに」
俺は小さくため息をつく。慣れたこととはいえ、女同士のこういうやり取りを聞くのは気が重くなるばかりだった。
(仲よさそうにしてても、結局いないとこでは陰口か)
ちなみに須藤なんて女もまったく知らない。