偽装新婚~イジワル御曹司の偏愛からは逃げられない~
「えぇ〜ショック!自分のものにならないのはわかってても、人のものになるのは嫌だぁ」
「……いいの?美香。美香はわりとがちで狙いにいってるのかと思ってたけど」
ふたりの探るような視線を受け流し、私は遠くを見つめた。
(最初は狙ってたけどね〜。十中八九の確率で落とせる私でも、残りの一、ニは落とせないわけで……)
「でもまぁ、逆転ホームランの可能性もなくはないかもよ!」
私はにやりと笑って、ふたりを見る。
「おっ。やっぱ美香、動くの?応援するよ!社長令嬢から、奪ってやれー」
「ん〜。バッターは私じゃないけどね」
小さくつぶやいた私の声は、他のふたりには聞こえなかったようだ。
私はそつなく仕事をこなしながら、入社当時のことを思い出していた。
そのころ、すでに鈴ノ木さんは社内のアイドルで、私もすぐに彼の存在を知った。
私は特別高学歴ではないが、自頭は悪くない。空気を読むのが得意で、要領もいい。敵も作るけど、味方も多い。
そんな賢い私だから、鈴ノ木さんを落とすのは難しいということを、早い段階で悟った。
(よく目が合う作戦も、さりげないボディタッチも、ことごとくかわされたもんなー)
おそらく鈴ノ木さんはいまだって、私の名前すら知らないだろう。
「……いいの?美香。美香はわりとがちで狙いにいってるのかと思ってたけど」
ふたりの探るような視線を受け流し、私は遠くを見つめた。
(最初は狙ってたけどね〜。十中八九の確率で落とせる私でも、残りの一、ニは落とせないわけで……)
「でもまぁ、逆転ホームランの可能性もなくはないかもよ!」
私はにやりと笑って、ふたりを見る。
「おっ。やっぱ美香、動くの?応援するよ!社長令嬢から、奪ってやれー」
「ん〜。バッターは私じゃないけどね」
小さくつぶやいた私の声は、他のふたりには聞こえなかったようだ。
私はそつなく仕事をこなしながら、入社当時のことを思い出していた。
そのころ、すでに鈴ノ木さんは社内のアイドルで、私もすぐに彼の存在を知った。
私は特別高学歴ではないが、自頭は悪くない。空気を読むのが得意で、要領もいい。敵も作るけど、味方も多い。
そんな賢い私だから、鈴ノ木さんを落とすのは難しいということを、早い段階で悟った。
(よく目が合う作戦も、さりげないボディタッチも、ことごとくかわされたもんなー)
おそらく鈴ノ木さんはいまだって、私の名前すら知らないだろう。