偽装新婚~イジワル御曹司の偏愛からは逃げられない~
「な、なんですか?」
私は後ずさりしながら答える。私が下がった分と同じだけ、光一さんが近づいてくる。涼しげなライトブラウンの瞳にじっと見つめられると、ロックオンされたように体が動かなくなってしまう。

「ぷっ。なんで敬語なんだよ?というか、なんで俺のこと避けるの?」
光一さんはさらりとそんなことを言う。どうやら本当に疑問に思っているらしい。
‥‥こ、この人って宇宙人かなにか⁉︎ 思考回路が理解不能なんですけど!なんで避けるのって‥‥。
「そ、そりゃそうでしょ!この状況で、私が今日の出来事をウキウキで報告できると思う?」
「すればいいじゃん。俺は普通に聞けるけど」
この人は私を馬鹿にしているんだろうか。飄々とした光一さんの態度に、私はますます余裕をなくしていく。
「じゃあ、しますけどね!結婚後に突然豹変した旦那様について親友に相談したら、外面に騙されたあんたが悪いって言われて、なんの反論もできなかった!いま、自分の馬鹿さ加減を痛感してます。これでいい?」
私に思いきり睨みつけられても、光一さんにはどこ吹く風だ。余裕たっぷりに笑っている。
「ははっ。的確なアドバイスくれるいい親友じゃん。できたら、籍入れる前に教えて欲しかったよな」
「いや、それは私がちゃんと聞かなかっただけで悠里は悪くな‥‥って、なんか違〜う!」
どうしてそんなに平然としていられるのだろう。
「クスクス。やっぱ面白いよね、華は。ーーあのさ、俺は干渉されたくないって言ってるだけで、別に常に喧嘩腰で生活しようとは思ってないんだけど」
「‥‥は?」
「同居人として、それなりには仲良くやっていこうよってこと」
あ、頭が痛い。なんだか耳鳴りもしてきた。‥‥彼の言いたいことが一ミリも理解できないのは、私のオツムが足りないせい?
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