偽装新婚~イジワル御曹司の偏愛からは逃げられない~
「よろしくね、あいつのこと。って、ひとり身の俺が言うことでもないか。白川さんみたく優しい奥さんなら間違いなく家庭円満だよな」
もちろんお世辞なんだろうけど、ちっとも嫌味にならないところが松島さんのすごいところだ。
「いえいえ、そんなこと‥‥あっ」
「おっ、噂をすればだな」
奥のエレベーターに吸い込まれていく人々に逆行して、出入口へと向かう一際目立つ人影。光一さんだ。やっぱり本物はオーラが違う。光一さんがそこにいるだけで、周りの人間は脇役になってしまう。
松島さんは光一さんに向かって大きく手を振る。それに気がついた光一さんがゆっくりとこちらに歩いてきた。
「おはよう、松島。おつかれさま、華」
光一さんは私にまで、とびっきりの笑顔を向けてくれる。どうやら会社ではホワイト光一さんを続けるつもりらしい。
「おはよ。始業時間前なのにもう外出か?」
松島さんの問いに、光一さんはちょっと疲れた顔で肩をすくめた。
「そ、取引先から呼び出し。今日は事務仕事を片付けたかったんだけど、まぁ仕方ない」
「月曜の朝から災難だな。頑張れよ」
「あぁ。頑張るから、もうちょっと接待費を融通してくれよ。お前、厳しすぎなんだよ」
「それはできない相談だな」
「堅物」
「経理の人間には褒め言葉だよ」
楽しそうに軽口をたたくふたりを、私はぼんやりと眺めていた。
ーーあれ、光一さんてこんな顔する人だったっけ? なんか、普通の男の人みたいだな。
もちろんお世辞なんだろうけど、ちっとも嫌味にならないところが松島さんのすごいところだ。
「いえいえ、そんなこと‥‥あっ」
「おっ、噂をすればだな」
奥のエレベーターに吸い込まれていく人々に逆行して、出入口へと向かう一際目立つ人影。光一さんだ。やっぱり本物はオーラが違う。光一さんがそこにいるだけで、周りの人間は脇役になってしまう。
松島さんは光一さんに向かって大きく手を振る。それに気がついた光一さんがゆっくりとこちらに歩いてきた。
「おはよう、松島。おつかれさま、華」
光一さんは私にまで、とびっきりの笑顔を向けてくれる。どうやら会社ではホワイト光一さんを続けるつもりらしい。
「おはよ。始業時間前なのにもう外出か?」
松島さんの問いに、光一さんはちょっと疲れた顔で肩をすくめた。
「そ、取引先から呼び出し。今日は事務仕事を片付けたかったんだけど、まぁ仕方ない」
「月曜の朝から災難だな。頑張れよ」
「あぁ。頑張るから、もうちょっと接待費を融通してくれよ。お前、厳しすぎなんだよ」
「それはできない相談だな」
「堅物」
「経理の人間には褒め言葉だよ」
楽しそうに軽口をたたくふたりを、私はぼんやりと眺めていた。
ーーあれ、光一さんてこんな顔する人だったっけ? なんか、普通の男の人みたいだな。