偽装新婚~イジワル御曹司の偏愛からは逃げられない~
「とにかくさ、そういうところは直したほうがいいと思うよ。天下の花園商事の受付嬢なんだから」
ようやく不愉快な話の終わりが見えてきたことに、私はほっとして息をついた。
「この度は誠に申し訳ございませんでした。いただいた貴重なご意見は他の従業員にも必ず伝えます。今後、新庄様が不愉快な思いをすることのないよう……」
クレーム対応ではお決まりの謝罪の言葉を口にしている最中、新庄がいきなり私の手をつかんだ。じっとりと汗ばんだ感触が不快で、思わず「ひっ」と小さな悲鳴をあげてしまった。
「誤解しないで欲しいのは、僕は君のことは評価しているんだよ。他の子たちみたいに
けばけばしくないし、男に色目をつかったりもしていないようだし」
新庄は私の手をぎゅっと握りしめ、あろうことか恋人つなぎのように指を絡めてくる。
クレーム男が突然、セクハラ男に豹変したのだ。どちらも面倒なことにかわりはないが、
後者はより厄介だ。こちらがあまり強く出ると、自意識過剰だの名誉棄損だのとわめき
たててくるからだ。できれば穏便に済ませたいが、どうしたものかと私が思案していると、思いがけないところから助けが入った。
「失礼。なにかご意見がおありのようでしたら、受付業務の責任者を呼びますので、どうぞあちらでお待ちください」
さっそうと登場した光一さんが、新庄の腕をひねりあげながら、冷たい声で言った。長身の彼ににらみつけられたことにびびったのか、新庄はオドオドと視線を外す。
「いや、意見はもう……この彼女に伝えたから」
「では、ご用件はお済みですね。今すぐお帰りください。これ以上、彼女にしつこくする
のなら御社にクレームをいれますよ」
「なっ。ちょっと話をしていただけで、セクハラ扱いするのか?」
ようやく不愉快な話の終わりが見えてきたことに、私はほっとして息をついた。
「この度は誠に申し訳ございませんでした。いただいた貴重なご意見は他の従業員にも必ず伝えます。今後、新庄様が不愉快な思いをすることのないよう……」
クレーム対応ではお決まりの謝罪の言葉を口にしている最中、新庄がいきなり私の手をつかんだ。じっとりと汗ばんだ感触が不快で、思わず「ひっ」と小さな悲鳴をあげてしまった。
「誤解しないで欲しいのは、僕は君のことは評価しているんだよ。他の子たちみたいに
けばけばしくないし、男に色目をつかったりもしていないようだし」
新庄は私の手をぎゅっと握りしめ、あろうことか恋人つなぎのように指を絡めてくる。
クレーム男が突然、セクハラ男に豹変したのだ。どちらも面倒なことにかわりはないが、
後者はより厄介だ。こちらがあまり強く出ると、自意識過剰だの名誉棄損だのとわめき
たててくるからだ。できれば穏便に済ませたいが、どうしたものかと私が思案していると、思いがけないところから助けが入った。
「失礼。なにかご意見がおありのようでしたら、受付業務の責任者を呼びますので、どうぞあちらでお待ちください」
さっそうと登場した光一さんが、新庄の腕をひねりあげながら、冷たい声で言った。長身の彼ににらみつけられたことにびびったのか、新庄はオドオドと視線を外す。
「いや、意見はもう……この彼女に伝えたから」
「では、ご用件はお済みですね。今すぐお帰りください。これ以上、彼女にしつこくする
のなら御社にクレームをいれますよ」
「なっ。ちょっと話をしていただけで、セクハラ扱いするのか?」