偽装新婚~イジワル御曹司の偏愛からは逃げられない~
「えーっと、じゃあさ、いまの話はなかったことにして、次なるミッションね」
「まだやる気かよ。懲りないな」
「夫婦で仲良く家事をしよう!ふたりの暮らす家をふたりで綺麗にする。そしたら、少しは
団結力が生まれるかも」
「この広さの部屋なら、どう考えても一人でやった方が効率いい……」
「文句言わない!」

せっかくなので、平日にはなかなかできない細かいところまで大掃除をすることに決めた。
リビング、寝室、バスルーム、キッチンの水回りとふたりで順番に回っていく。

「なんで、いきなり掃除機かけてんだよ?」
「え、掃除は掃除機からでしょ。そのあと、水拭き。私はいつもそうだけど」
「棚の上とか高いとこから順番にやらなきゃ意味ないだろ」
「まぁそうかもしれないけど。……光一さんて、男のくせに意外と細かい」
「どうせやるなら、きっちりやらないと時間の無駄だろ」
「ほら、今の言い方とか小姑っぽい」

なんやかんやと言い合いつつも、ようやく掃除を終えた。綺麗好きなのは知っていたけど、
光一さんのあまりの細かさに私は辟易してしまった。同じように、彼は私の雑さに呆れて
いるのだろうけど……。

「じゃあ、次は料理ね。って、光一さん!野菜はもっとしっかり洗ってよ。そんなんじゃ
土が取り切れないよ!」
「今どきスーパーで買った野菜に土なんかついてないよ」
「え~。掃除にはあんなに細かいくせに……。うそっ、醤油ボトルのまま注ぐってどういう
ことよ?いれすぎたら、どうするの?」
光一さんは野菜炒めの鍋に、ボトルのまま醤油を回しかけた。調味料は計量カップで
きっちり計る派の私からすれば、ありえない暴挙だ。
「家庭料理なんで、目分量でいいんだよ。そっちのがうまい」
「ない、ない、絶対ないよ!」







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