偽装新婚~イジワル御曹司の偏愛からは逃げられない~
警備のおじさんとは休憩中によくおしゃべりする仲だ。きっとこころよく引き受けてくれるだろう。
「ありがとうございます!助かりました」
私は松島さんに頭を下げる。
「なんか怪しい動きとかされたら、遠慮なくまわりに助けを求めること!」
「はい、そうします」
松島さんがふっと柔らかい笑みを浮かべた。
「鈴ノ木がさ、白川さんとの結婚を同期に報告したときにみんなからアレコレつっこまれてさ、どこに惚れたんだ?とかって」
その光景は容易に想像できた。会社のエースの光一さんが地味でぱっとしない私を選んだのだ。さぞかし大騒ぎになったことだろう。

「あはは。光一さん困ったでしょうね」
なにせ、別にどこにも惚れてなどいないのだから。
「いや、照れるでもなく堂々とのろけてたよ。
白川さん、朝とか早く来ると掃除のおばさんの仕事少し手伝ったりしてるんだって?そういうことが自然とできるところがいいって、鈴ノ木褒めてたよ」

たしかに……私は満員電車が苦手だから朝は定時より少し早めに出社する。身支度を終えても少し時間があまるから、受付の花の水をかえたりテーブルを拭いたりして時間をつぶす。まだお客様もいないので、掃除のおばさんや警備のおじさんとおしゃべりしたりもする。
彼らはリタイア後のシルバー人材さんだから、重いものを持ったりするのは大変だろうなと時々手伝うこともある。

< 60 / 131 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop