偽装新婚～イジワル御曹司の偏愛からは逃げられない～
結局、腰が抜けて歩けなくなってしまった私を光一さんがおんぶでマンションまで連れ帰ってくれた。そして私の支離滅裂な説明を辛抱強く聞いてくれた。

「でも、よく考えたらただの勘違いだったのかもしれない。笑ったような気がしたってだけだし。怖くなって、悪い方に考え過ぎたのかも……」
光一さんは怪しい男は見なかった。ということは、あの男は走り出した私を追いかけてはこなかったということだろう。
ということは、やっぱり私の勘違いの可能性が高い気がする。
「いや。明日、警察に行って話は通しておこう。勘違いならいいけど、そうじゃない可能性もある」
「えぇ〜怖いこと言わないでぇ」
「馬鹿か。気のせいだって決めつけて、対応しない方がよっぽど怖いだろうが」
「それはそうかもしれないけど……身に覚えもないし」
「単純に乗ってきた電車内で見て目をつけたとか、受付っていう仕事柄、向こうは一方的に華を認識してる場合もあるし」
「う〜ん。美香ちゃんならともかく、私なんかを？」
「アホか。ストーカーやら痴漢やらになるようなモテない男は地味で大人しそうな女が好きなんだよ。華は警戒心がなさすぎっ」
光一さんが声を荒げた。あきらかに怒っている。
ホワイト光一さんは感情をあらわにすることはなかったけど、最近の彼はわりとオープンに喜怒哀楽を見せてくれる。
それ自体は喜ばしいことなんだけど、迷惑をかけたあげくに怒らせてしまったという今の状況はあまり嬉しくない。

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