偽装新婚~イジワル御曹司の偏愛からは逃げられない~
私たちがスピード結婚だったこともあって、両親と光一さんはまだ数えるほどしか会ったことがない。それも結納とか結婚式とか、うちの両親なりに頑張って猫かぶっていた場面ばかりだ。
「真面目そうなお父さんと穏やかなお母さんて印象だったけど、普段もそう?」
私はあんぐりと口を開けて、かたまってしまった。
「真面目!うちの父が?一番似合わない単語だぁ……」
「真面目そうに見えたけど?」
「いやいや!思いつきで起業してみたり、思いつきで放浪の旅に出ちゃったり、とんでもない人なの。だいたい、私がエリートを捕まえたいと身の丈にあわない野望を持ったのもあの人のせいで」
父のような男とだけは結婚すまいと、固く誓ったのだ。
父の悪行をあれこれ暴露する私を見ながら、光一さんは唇の端をあげて、くすりと笑った。
「楽しそうな家族じゃん。ちょっと羨ましいわ」
「う、羨ましいっていうのは光一さんとこみたいな家族を言うんだよ。紳士的なお父様に、美人で優しいお母様、優秀なお兄さん!ファミリードラマに出てきそうな完璧さだよね」
まだ数回しか会ったことはないけれど、理想的すぎる家族だった。なにより、毛色の違いすぎる私のこともあたたかく受け入れてくれる器の大きさが素晴らしい。実は、嫌味を言われたり、いびられたりとかするんじゃないかと怯えていたのだけれど、まったくの杞憂だった。
「ドラマねぇ……ドロドロ不倫ものか、遺産相続調停ものってとこかね」
「えっ?」
「あの二人、仮面夫婦」
「あの二人って、どの二人よ?」
「うちの両親。どっちも外に恋人がいるよ。兄貴はまぁ善良で普通の人間だけど、俺の兄貴あの人だけじゃないしな」
「真面目そうなお父さんと穏やかなお母さんて印象だったけど、普段もそう?」
私はあんぐりと口を開けて、かたまってしまった。
「真面目!うちの父が?一番似合わない単語だぁ……」
「真面目そうに見えたけど?」
「いやいや!思いつきで起業してみたり、思いつきで放浪の旅に出ちゃったり、とんでもない人なの。だいたい、私がエリートを捕まえたいと身の丈にあわない野望を持ったのもあの人のせいで」
父のような男とだけは結婚すまいと、固く誓ったのだ。
父の悪行をあれこれ暴露する私を見ながら、光一さんは唇の端をあげて、くすりと笑った。
「楽しそうな家族じゃん。ちょっと羨ましいわ」
「う、羨ましいっていうのは光一さんとこみたいな家族を言うんだよ。紳士的なお父様に、美人で優しいお母様、優秀なお兄さん!ファミリードラマに出てきそうな完璧さだよね」
まだ数回しか会ったことはないけれど、理想的すぎる家族だった。なにより、毛色の違いすぎる私のこともあたたかく受け入れてくれる器の大きさが素晴らしい。実は、嫌味を言われたり、いびられたりとかするんじゃないかと怯えていたのだけれど、まったくの杞憂だった。
「ドラマねぇ……ドロドロ不倫ものか、遺産相続調停ものってとこかね」
「えっ?」
「あの二人、仮面夫婦」
「あの二人って、どの二人よ?」
「うちの両親。どっちも外に恋人がいるよ。兄貴はまぁ善良で普通の人間だけど、俺の兄貴あの人だけじゃないしな」