天馬空を行く


しばらくするとガタンと音がして
部屋の扉が開かれた。


怯えながら顔を上げると、
そこには病室で会った男が立っていた。


「おはよう……って言うより、
おかえりなさいの方が合ってるか。」


愛夏はその言葉を聞いた途端、実親の元に帰って来てしまったと確信した。


そんな思いも虚しく男は話を続ける。


「ちょっと手荒な真似かとは思ったんだけどね、この方法しか思いつかなくて…


睡眠薬で君を眠らせて、僕の手にしていたキャリーケースに入れたんだ。

だから、案の定怪しまれることなく
ここまで運び出すことができたよ。」


そんなことまでして、
何がしたいのか全く理解できない。



愛夏は男のことを、
一体何者なのかと見つめた。



男はその視線を察し、愛夏に告げる。



「あっそういえば、
僕のこと覚えてないんだっけ?

僕は君の新しいお父さんだよ。」



男の衝撃の発言に愛夏は目を見開いた。


その反応に男は微笑み、
「さぁ、時間はまだたくさんある。
これから一緒に楽しいことをしようじゃないか……」と呟くのだった。


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