天馬空を行く


~楓said~


午後の外来を終え、
担当の看護師と話していた。


すると、隣の診察室から"ガラガラガタンッ"と
何かが倒れる音が響いた。



急いで駆けつけると、
見事に点滴台が倒れて

その近くでしゃがみ込んでいる
柊耶の姿があった。


(さては急に立ち上がったな?)


「おいっ、ただでさえ血が足りてないんだから急に立つなよ……」


呆れて声を掛けると、
柊耶は駆けつけに来た俺に気づいたのか
"わりぃ"と一言発する。



それでも顔を上げない柊耶を見て、
明らかに様子がおかしいと感じる。


「おい?立ちくらみ?
……気持ち悪いか?」

と聞くと、小さく頷いた。



俺と一緒に駆けつけた看護師の手も借りて、ひとまず柊耶の身体をベッドに戻す。



その間、柊耶の身体に触れると体温計で
測らなくとも熱が下がっていないことが
丸分かりだった。



(これは入院かな?どちらにせよ、)


「しばらくは仕事休みな。」



柊耶はそんな言葉が届く前に、
再び眠りに落ちていった。


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