シンデレラLOVERS
静葉さんの名前をわたしの口から聞かされた善雅くんは、そのまま口を噤んでしまう。
わたしがこの名前を出したら、善雅くんが苦しい思いをしてしまうってわかってたけど。
きっとこれを乗り越えなきゃ、わたしたちはちゃんと信頼し合えない。
黙って善雅くんの答えを待っていたわたしをじっと見据え、
「静葉とヨリを戻したから気付いた。……静葉と一緒に居て嬉しいはずなのに物足りなくて」
気が付けば頭の片隅でずっと日菜琉のことを考えていた。
善雅くんの口から聞かされた言葉に驚いてしまう。
わたしが静葉さんに勝てるモノなんてないって思ってたから、まさか比べられてるなんて思いもしなかった。
「あんなに俺、態度悪かったのに……日菜琉がいつも優しくしてくれたから……」
わたしが善雅くんを思ってやってきたことが、ちゃんと伝わったんだって実感出来る言葉だった。
それに、
「最初に優しくしてくれたのは善雅くんだよ」
裏門でわたしを助けてくれた善雅くんだから、わたしは喜んでもらいたいって思ってたんだ。
わたしの言葉を聞いた善雅くん自身には全く自覚がないようで、そのまま黙って考え込んでしまう。
その善雅くんの姿が可愛くて思わず笑いが零れてしまう。
あまり悩ませても可哀想だから、
「裏門で助けてくれたの、嬉しかったから」
素直に答えを伝えたら、善雅くんははっとしたように目を見開いてわたしを見つめた。