シンデレラLOVERS

静葉さんの名前をわたしの口から聞かされた善雅くんは、そのまま口を噤んでしまう。


わたしがこの名前を出したら、善雅くんが苦しい思いをしてしまうってわかってたけど。


きっとこれを乗り越えなきゃ、わたしたちはちゃんと信頼し合えない。


黙って善雅くんの答えを待っていたわたしをじっと見据え、


「静葉とヨリを戻したから気付いた。……静葉と一緒に居て嬉しいはずなのに物足りなくて」


気が付けば頭の片隅でずっと日菜琉のことを考えていた。


善雅くんの口から聞かされた言葉に驚いてしまう。


わたしが静葉さんに勝てるモノなんてないって思ってたから、まさか比べられてるなんて思いもしなかった。


「あんなに俺、態度悪かったのに……日菜琉がいつも優しくしてくれたから……」


わたしが善雅くんを思ってやってきたことが、ちゃんと伝わったんだって実感出来る言葉だった。



それに、


「最初に優しくしてくれたのは善雅くんだよ」


裏門でわたしを助けてくれた善雅くんだから、わたしは喜んでもらいたいって思ってたんだ。



わたしの言葉を聞いた善雅くん自身には全く自覚がないようで、そのまま黙って考え込んでしまう。



その善雅くんの姿が可愛くて思わず笑いが零れてしまう。


あまり悩ませても可哀想だから、


「裏門で助けてくれたの、嬉しかったから」


素直に答えを伝えたら、善雅くんははっとしたように目を見開いてわたしを見つめた。

< 101 / 115 >

この作品をシェア

pagetop