シンデレラLOVERS
裏シンデレラLOVERS
「善雅の奴、体育の授業中に熱出してぶっ倒れちゃったんだ」


善雅を保健室に連れて行って、授業に戻った頃には後片付けをしているところだった。


そのまま制服に着替えて終礼をした後すぐ。


5組の教室にいた水原さんを呼び出して、善雅のことを伝えた。


芳川が善雅の前に現れてヨリを戻して、約束の一ヶ月を待たずして二人は別れた。


だから、俺の言葉を聞いた水原さんはただ怪訝そうに眉をひそめる。


確かに二人の関係は終わったけど、でも善雅が芳川と別れたのも俺にはわかっていた。


今日の善雅は朝から口数が少なくて、ずっと何かを考えてるみたいだったからな。


理由は多分……目の前の彼女へのホントの気持ちに、善雅が気づいてしまったからだ。



一ヶ月前までは、見た目の華やかな芳川の外見の魅力に執着して、レベル上げなんて不毛なことしてたのに。



成長したなつくづく感じて……なんかまるで親になったみたいな気分だ。


「保健室で寝てるから、様子見てあげてよ。起きたら俺、連れて帰るし」


俺の言葉を聞いた水原さんは少しだけ考えた後、


ありがとう



こう言って笑顔を見せて、保健室の方へと走って行ってしまった。



こうなるってわかってたのに。
背中を押すような真似をしてしまう自分にちょっとばかし後悔する……。



あんなに嬉しそうに善雅のところへ走っていく後ろ姿。
目の前で裏切られても、それでもまだ善雅が好きなんだって……嫌でもわかってしまう。


だから、君の恋が報われるなら俺は嬉しい。



優しくて健気な彼女を見ていて芽生えかけた小さな恋心は、このまま昇華させてしまおう。




なんて、感傷に浸りすぎか……。


失恋なんて呼べるほど俺は君を知らない。


悔しいけど君の瞳には最初から最後まで、善雅しか映ってないってわかってた。
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