シンデレラLOVERS
慌てて顔を上げた先に立っていたのは、背が高くて綺麗な顔をした男の子だった。
「サボっちゃダメでしょ」
どうしよ……バレちゃった……。
男の子の綺麗だけど不敵な笑顔に、全身の血の気が引いていくような感覚がした。
「お願い! 今日だけなんですっ!」
でも、わたしだって引き下がれない。
怖じ気づきそうな心を奮い立たせて、必死に彼を見つめながら頼み込んでみる。
今日は葉琉ちゃんの晴れ舞台だもん。
何があっても絶対に見に行くって決めていたんだ。
「何の用?」
必死に食い下がるわたしが不思議だったのか。
目の前の彼がわたしにサボる理由を尋ねてきた。
こうして見つかってしまった以上、隠しても仕方ないし正直に答えてみる。
「お姉ちゃんの文化祭でファッションショーが……」
「ファッションショー?」
「服飾の専門学校生なんです。お姉ちゃんがデザインした服が出るから」
自分から聞いた割にわたしの答えを、彼は別段興味無さそうに聞きながら相槌を打つ。
そして、
「見逃してやるよ」
こう言ってにこっと綺麗な微笑みを浮かべた。
「ホントっ? ありがとうございます!」
良かった!
ダメ元でも頼んで見るもんだな~。
安心したわたしに彼は綺麗な笑顔を浮かべたまま、更に言葉を続ける。
「ただし……」
なんだろう……綺麗に微笑む彼の顔に何故か不安が頭をよぎる。
「俺と付き合ってよ。一ヶ月」
「えっ? えーーっ!?」
驚きのあまり、わたしは思いっきり大口を開けてぽかんとしてしまう。
まさか……こんな申し出をされるなんて夢にも思ってなかった。
そのまま固まっているわたしに、見かねた彼が手を差し出した。
「携帯出して」
「えっ、あっ……はい」