シンデレラLOVERS
気がつけば空は夕焼けに変わって、時刻もすっかり放課後になっていた。
ベッドの中で寝たり起きたりを繰り返してるうちに、体の方は随分と楽になったみたいだ。
朝より軽くなった体をベッドから起こして、熱を計ろうと体温計を探していたときだった。
テーブルの上で携帯の着信音が鳴り響き、慌てて携帯を取ってその相手を確認する。
『着信 有宮 善雅』
……有宮くんだ。
ディスプレイが映し出した文字にトクンと胸が小さく高鳴る。
今まで一度も掛かってきたことのない有宮くんからの着信に、にわかに緊張が走った。
それを落ち着かせようと一呼吸置き、わたしはゆっくりと通話ボタンに指をかけた。
もしかして……わたしのこと、心配してくれて電話してくれたのかな?
そんなはずないってわかってるのに、そう期待せずには居られなかった。
「……もしもし?」
緊張感と微かな喜びを胸に電話に出たわたしの気持ちとは裏腹に、有宮くんの声は低くてどこか不機嫌な色を帯びている。
「今どこ?」
なんだか怒ってるみたいなトゲトゲしい口調に、わたしの微かな期待は一瞬で消え失せた。
ちゃんと有宮くんの言い付け通りに必要以外のメールも電話もしていない。
頼まれていたお弁当だって作ったのに……。
不機嫌の理由がわからなくて、わたしは恐る恐る有宮くんの質問に答える。
「家、だけど……」
「家っ? なんで?」
なんでって……。
思わぬ切り返しに驚いて言葉が出なかった。
どうやら有宮くんはわたしが学校を休んだこと知らないみたいだ。
もしかして、やっぱり有宮くんに渡すのが嫌になって芹華ちゃんお弁当を届けなかったのかな……。
「朝から熱があったから……今日は休んだんだけど……」
なんて一抹の不安を抱きつつも答えたわたしに、電話の向こうで有宮くんが一瞬黙り込んだ。
「弁当は?」
「えっ? 芹華……友達が持って行かなかった?」
「来たけど……」
「朝に頼んだんだ。良かった」
やっぱり芹華ちゃんは約束通りにちゃんとお弁当を有宮くんに届けてくれたんだ。
今日も無事にお弁当を届けることが出来て、思わず良かったって声に出してしまう。
それに後で芹華ちゃんに、きちんとお礼を言おう。