シンデレラLOVERS
苺とカーキ色
日菜琉の熱も一日ですっかり治ったらしく、次の日にはちゃんと靴箱に見慣れない弁当箱が入っていた。
それを当たり前のように受け取り、絋也の前に広げたら、
「病み上がりなんだから、今日くらいゆっくりさせてあげれば良いのに……」
なんて嫌味を言われたけど……。
「日菜琉が作るって言ったんだから良いだろ」
俺のこの言葉を聞いたら、そのまんま何も言わなくなって……ただ呆れ果てた顔で俺から視線を逸らして溜め息をついていた。
そんな絋也の態度も慣れっこになってきた今日この頃。
相変わらず地味子との退屈な日々は淡々と過ぎていく。
季節は冬真っ盛りのイベントシーズンを目前に控えた時期にさしかかっていた。
クリスマスに冬休みにカウントダウン。
でも今は、カップルには待ち遠しくて仕方ないであろうイベントが目前なただの平日だ。
隣にはいつも同じ顔して笑ってる地味子。
最近ではいつも下ろしていた髪を、色々といじって来たりもしてる。
地味子の癖に色気づいたか?
そうやって俺の気をひこうとしてるのだとしても俺には関係ない話だ。
どうせこの地味子との付き合いも冬休みを待たずして終わる。
クリスマスとかめんどくさいイベントを挟んでなくてマジで良かったって、心底思う。
「有宮くん」
「なに?」
そんな俺の心境など知るよしもなく。
隣の地味子……改め日菜琉が、何やら嬉しそうに俺の顔を見上げてる。
なんか久々に真正面からちゃんとコイツの目を見た気がする。
毎日一緒に帰ってる時も、いつも上の空で日菜琉の話はろくに聞いてないからな。
「ハイッ!」
何を思ったのか。
そんなことを考えてぼんやりしていた俺の前に、カバンとは別に提げていた薄ピンクの紙袋が差し出してきた。
「なに……これ?」
「お誕生日おめでとう!」
少しはしゃいだような声と同時に、さっきより一段と嬉しそうに笑う日菜琉の顔が目に飛び込んできて……思わずポカンとしてしまう。
一歩遅れて気付いたけど……今日は俺の誕生日だ。
特に意識してなかったから、自分でもすっかり忘れてた。
つーか、日菜琉はなんで俺の誕生日なんか知ってるんだ?
「言ったっけ? 俺?」
「うん。最初の頃に、有宮くんのアドレスに数字があったから聞いたらそうだって」
俺の疑問にあっさりと答えたけど……こっちはそんなやりとり全然覚えてない。