シンデレラLOVERS
「言ったっけ? 俺?」
「うん。最初の頃に、有宮くんのアドレスに数字があったから聞いたらそうだって」
わたしの答えに有宮くんは不可解そうに眉をひそめてる。
きっと……覚えてないんだろな、わたしとそんな会話をしたことなんて。
「これ、なに?」
渡した紙袋の中身をのぞき込みながら、有宮くんが不思議そうに視線を投げかけてきた。
「苺ムースだよ。有宮くん苺好きって言ってたから」
「……言ったっけ?」
「うん。わたしがお弁当に苺入れてもいい? って聞いたら、苺好きだからいいって」
覚えてるわけないか。
有宮くんはいつだってわたしの話を上の空で相槌打ってるだけだから。
それでもいいよ。
今、この瞬間の有宮くんが喜んでくれるなら……わたしは嬉しい。
「……ありがと」
少し照れたような有宮くんが、わたしから視線を外しながら呟いた小さな一言。
思わず驚きで目を見開いてしまった。
初めて言われたお礼がじんわりと染みて、あぁ……やっぱり嬉しいなって自覚する。
「うんっ」
言われたお礼が嬉しくて、思わず声が弾んでしまう。
だって有宮くんがくれたありがとうの一言で、わたしはこんなに幸せな気持ちになれるから。