シンデレラLOVERS
補習開始から三十分。
集中して問題を解いたおかげで、残りあと二問にまで解き終えていた。
ずっと同じ姿勢でいて強張った体をぐっと伸びをしてほぐす。
集中力が切れたついでに教室の時計を何気なく見ながら、ふっとある疑問が浮かんだ。
……日菜琉は?
今の今までプリントに全神経を注いでた俺が、連絡なんて気の利いたことをしてるワケない。
さすがに三十分以上も経ってるんだ。
もしかしたらメールが入ってるかもしれない。
持っていたペンを置き、カバンの中を探って携帯を取り出した。
「…………」
慌てて開いた画面には、見慣れた待ち受け画面と秒単位を刻むデジタル時計が映し出されてるのみ。
着信もメールもない。
もしかして……黙って帰ったのか?
何も言わずに待たせたのが悪いけど、それでもなんか腹が立つ。
必要以外は連絡するなって言ったのは俺だけど、だからって何も言わずに帰るなよ。
補習ってだけでテンションが下がってるのに、日菜琉に置いて帰られたなんて俺のプライド的に許せない。
そう思ったら急にやる気が無くなって、プリントに一気に関心がなくなった。
それで何の気なしに真横にあった窓の外に目を向ける。
「……あれっ」
今まで意識してなかったけど、ここから上手い具合に門の外の待ち合わせ場所が見える。
そこであっさりと見付けてしまった人影。
見間違えるワケがない。
日菜琉だ。
遠目だけどハッキリわかる。
壁にもたれかかって、ぼんやり校舎を見上げてる日菜琉の姿が。
その姿を見た瞬間、俺は解きかけのプリントを教卓に置いて教室から飛び出していった。
息が切れるのも構わずに階段を一段飛ばしで、猛ダッシュで駆け下りていく。
こんな真剣に走るのは久しぶりだった。