シンデレラLOVERS
でも、有宮くんの表情はさっきからムッとしたままで。
それを見ると必死に保っていた笑顔が崩れそうになった。
その時。
「……ごめん。俺が連絡しなかったから……」
思わず耳を疑ってしまいそうな、小さな声で有宮くんがわたしに謝った。
それが新鮮で初めてちゃんと有宮くんに、わたしの存在を見てもらえたような気がして……なんだか嬉しい。
「ううんっ。補習終わって良かったね」
自然と顔がほころんでしまうわたしから、有宮くんはすぐさま目を逸らしてしまった。
有宮くんの態度がまるで照れ隠しみたいに見えるのは……わたしの自惚れかな。
「寒いし……もう帰ろ?」
ごめん
有宮くんのそれが聞けただけで、待ちぼうけしてた三十分は必要なものだったんだって思えた。
満たされた心が弾むのを抑えて、わたしは有宮くんを促すように一歩足を進める。
その瞬間、背中越しに有宮くんの声がした。
「……ちょっと寄り道しねぇ?」
わたしを呼び止めた言葉がまるで嘘みたいで、思わず見開いた目で有宮くんを見つめた。