シンデレラLOVERS
寄り道と思い出
俺から持ちかけた提案で、初めて帰り道以外の場所を並んで歩いてた。
隣に居る日菜琉は不思議そうな……でも、楽しそうな表情を浮かべてる。
同じ制服を着て並んで歩いてる俺たち。
こんな風にしてたら俺らも、普通のカップルに見えるんだろうか……。
童顔の地味女と顔立ちも髪の毛も派手な男。
普通のカップルには見えないよな……絶対。
そんなことをぼんやり考えながら歩いていた俺の耳に、日菜琉のため息混じりの感嘆の声が聞こえた。
「わぁ……」
駅前の裏口。
ここにあるやたらデカいシンボルツリーが、クリスマスを前にしてライトアップされてる。
日が暮れるのも早くなったから、ちょうど電飾にスイッチが入ったらしい。
まばらな人影の中で、クリスマスツリーさながらにキラキラと点灯し始めた。
隣では日菜琉が首を真上に向けて感嘆の声を漏らしながら、シンボルツリーを見上げてる。
期間限定とはいえ、俺たちはカップルなんだ。
……こんなのも有りだろ。
適当に過ごしてさっさと一ヶ月なんか過ぎてしまえばいい……なんて思って、彼氏をサボってた罪滅ぼしのつもりだ。
しばらく黙ってそれを見上げていた日菜琉が、不意に口を開いた。
「わたし……毎年ここ来るの楽しみにしてたんだ」
……誰と?
なんて野暮な質問がチラッと浮かんだのを、俺は咄嗟に打ち消した。