シンデレラLOVERS

「中学生の時から毎年見に来てたんだけどね、そこで毎年会うカップルがいたの」


ライトアップされたシンボルツリーから目を離さずに、わたしは頭の中に浮かび上がる思い出を言葉に乗せていった。


隣で有宮くんはただ黙って相槌を打ってくれている。
なんとなくだけど、その相槌はいつもみたいな適当なのじゃなくて、ちゃんとわたしの言葉を聞いてくれているような気がした。


「そしたらね、去年その人たちが赤ちゃんを抱っこして見に来てたんだ」


三人でツリーを見上げる幸せそうな後ろ姿。
それを思い出したら思わず笑顔がこぼれて、隣で話を聞いてくれていた有宮くんに視線を向けた。


どんな顔をしたらいいのかわからないって言わんばかりに、困った顔を浮かべてわたしから目をそらした有宮くん。



「結婚したんだ?」


「うんっ。幸せそうだったよ」



三人でこのイルミネーションを見上げる姿が忘れられない。


わたしの顔はさっきから幸せなことを考えて緩みっぱなしだ。



「それから、わたしの夢なんだ。……大好きな彼氏とここに来るの」


こんなことまで言うつもりは無かったのに、つい思っていたことを零してしまう。


でも、憧れの場所なのは本当のこと。


だから、有宮くんと一緒に見られて良かったって……心から感じてる。


有宮くんにその気が全く無いのはわかってるけど。



「……っ」


「…………」



不意に温かな感触にギュッと包まれて、かじかんでいた指先がじわじわと温まっていく。


有宮くんの手って……こんなに大きかったんだ。



ずっと遠かった体温が、初めて指先越しに伝わってきた。


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