シンデレラLOVERS
「久しぶり善くん」
綺麗な笑顔を浮かべた静葉が、甘い声で俺を呼びながらこちらへと歩み寄ってくる。
同じ中学だった俺らが付き合ってたのは、高一の夏から冬にかけての数カ月。
中学の三年間を部活に費やしてた当時の俺は、ちょっと背が高いだけの見た目にも性格にも地味なヤツだった。
そんな俺とは対照的に、当時から学年でもトップクラスにモテまくっていた静葉は縁の無い人間で。
三年の夏が過ぎて部活も引退して、毎日がぼんやりしてきた頃……静葉が俺に声をかけてきた。
「有宮くんって……実はかなりイケメンだよね?」
最初は言われてる意味がわからなかった。
部活一辺倒で女子と付き合ったこともなければ、モテた記憶もなかったからだ。
静葉に声をかけられたその日から、俺の生活はめまぐるしくかわっていくことになる。
静葉がことあるごとに近づいてきては、アドバイスという名の改造をしてきたのだ。
髪型。服装。喋り方。趣味。
ありとあらゆるモノを静葉の望むモノへと変えていった。
そして高一の夏。
静葉好みの男に完成した俺は、当然のように静葉の彼氏になっていた。
実際。
静葉のアドバイス通りにした俺は、中学の頃とは比べものにならないくらい女子からモテるようになった。
だから、俺を大変身させた静葉に感謝してたし、こんな美人の彼女が居ることが誇らしかった。
けど……静葉は絵に描いたような典型的な高飛車な女の子で。
デートのドタキャンは平気。
奢りは当然。
何をするにも基準は自分が最優先。
付き合い始めてからは、傍若無人な彼女に振り回されるばかり。
正直、楽しいとかよるもしんどいって気持ちが大半を占めていた。
……それでも俺は静葉の彼氏であることに執着し続けた。
いつでも華やかで綺麗な彼女の隣にいれば、俺もずっとキラキラした人間で居られるって信じていたから……。